「すぐき漬け」は、京都の伝統野菜である「すぐき」と呼ばれるかぶを使った漬物です。この漬物は、その独特の酸味が特徴で、通常は漬物として食べられます。原料として「すぐき菜」と塩だけを使用し、乳酸発酵させることで特有の酸味が際立つ漬物です。「すぐき漬け」は「千枚漬け」と「しば漬け」とともに、京都で有名な「京都三大漬物」の一つとして評価されています。
すぐきの起源については複数の説があり、安土桃山時代に上賀茂神社の社家が栽培を始めた説や、京都御所から種をもらったという説があります。
後堀川天皇の「加茂日記」に1231年に「すぐき一桶」との記載があることから、1200年代前半にはすでに存在していたと考えられています。当初、すぐき漬けは上賀茂の社家や公卿への贈り物として使われ、種の持ち主も限られていました。江戸時代末期になると、すぐき漬けは上賀茂から京都市内へ売り出され、広く知られるようになりました。名前「すぐき」は「酸っぱい漬物」から
一方、「すぐき漬け」は江戸時代初期に誕生し、当初は社家や御所へ献上される高級漬物として始まりました。江戸時代後期には上賀茂神社周辺の農家でも作られましたが、その後「就御書口上書」と呼ばれる法令により、他の村に持ち出すことが禁止され、生産は限定的でした。明治維新を経て、一般市民に広まり、街で広く楽しまれるようになりました。
「すぐき漬け」は、下漬け、本漬け、室入れの3つの工程で作られます。室入れは、40℃ほどに加温された室で乳酸発酵を進めるプロセスで、現在の一般的な方法です。この方法を使用すると、漬物が約半月で食べごろになります。かつては室入れの代わりに、気温に左右される「時候熟れ」という自然な発酵プロセスが用いられました。この方法では、漬物が春から夏にかけて完成し、江戸時代には夏の贈り物として親しまれました。
「すぐき漬け」は11月中旬から1月ごろに収穫し、漬ける季節です。この時期には霜が降りて、すぐきの根部分の糖度が高まるため、最適な味わいが楽しめます。年末年始の贈り物としても広く愛されています。
「すぐき漬け」の葉とかぶは別々に調理します。葉は細かく刻んだり、長さを調整して切ったりし、かぶは半月切りやいちょう切りにします。この漬物はごはんのおかずとして楽しむほか、お茶漬けの具材として使ったり、お酒のつまみとして楽しむことができます。