四季折々のダイナミックな景観
熟練した船頭が棹、舵、櫂で舟を操り、底の浅い川舟で巨岩を見事な櫂さばきですり抜け、水しぶきをかぶって滑るように進む、保津川の渓流にのって下る保津川下り。
亀岡を起点に、観光名所・嵐山の渡月橋まで約16キロメートル、時間にして約2時間の全行程はエキサイティングな体験ができる。
1年を通して運航していて、桜、岩つつじ、新緑、紅葉、雪景色の保津峡の景観により、どのシーズンでもそれぞれの趣を持った景色が楽しめる。
渓谷は巨岩、巨石に富んだ急流と瀞が続き、大高瀬、二股の瀬、殿の漁場、女渕、烏帽子岩、鎧岩、かえる岩、書物岩、ライオン岩などの見どころが連なっている。
江戸時代から続く舟下り
保津川下りは1606年に商人であった角倉了以が丹波地方の産物を京へ送るため、水路として整備した。
江戸幕府から河川改修工事の許可と通航料徴収などの権利を得て工事に着手。
水中の岩を鉄槌で砕き、水上に出ている岩は焼き砕き、浅瀬は石で埋めて深くし、瀑布は上流を穿って均して、5か月をかけた工事により高瀬舟を通せるようにした。
かつて一旦荷物を積んで川を下った高瀬舟は、人が約4時間かけて川に浮かべた舟を曳いて川上へ歩いた。保津川の右岸には、亀岡まで舟を戻すための道があった。
荷物船から観光船へ
鉄道の開通など陸上輸送の発達によって、運輸が陸運に切り替わり、1948年頃までには舟運としての利用はなくなったが、京都の代表的な観光地である嵐山・嵯峨野に近いことから、1885年に観光客を対象とした遊覧船による川下りが行われるようになった。
この風流な保津川下りは夏目漱石の『虞美人草』を始め、水上勉、薄田泣菫、大町桂月、三島由紀夫など幾つもの文学作品に登場した。
発着地の亀岡と嵐山
行きの乗船場がある亀岡は1578年に明智光秀が丹波亀山城と城下町を築いた土地。
川を下った着船地は関西有数の観光名所の嵐山・嵯峨野。
目の前に渡月橋、すぐ近くに世界遺産の天龍寺をはじめ、二尊院、祇王寺、野宮神社、大覚寺、大河内山荘などがある。
嵐山からの帰路
車で利用する場合は乗船場に無料駐車場が完備されていて、JRで乗船場に戻ってくることができる。
着船場→徒歩15分→JR「嵯峨嵐山駅」→JR「亀岡駅」北口→徒歩6分→乗船場
熟練技で躍動感ある舟路
川下りの舟は定員16人の底の浅い川舟。
船頭が3人、風や水量によっては更に2人が乗り込み、息を合わせて舟をコントロールしながら、激流や巨岩が点在する流れの中を下る。
船首では「竿さし」が長い竿を操って方向の調整を行い、その後ろで「櫂ひき」が木製のオールを漕いでエンジンとなり、後方で「舵とり」が船の進路を決めている。
ルートとなる保津川は、直線にして7.3kmの距離が蛇行することで11.5kmもの距離になっている複雑なコース。
進む方角がうねるように変わり、急なカーブが幾度もあり、舟を操る熟練の技と、水しぶきがかかるような水面との距離で、エキサイティングな体験ができる。
名物 売店船
着船地が近づき川の流れが緩やかになった所で、提灯を掲げた舟が近づき、舟に横付け。
この舟は川沿いの茶屋、琴ヶ瀬茶屋の舟で船に乗ったまま軽食を買うことができ、熱々の味を楽しめる。
エンジンの無い時代には、竿で営業していた創業1919年の伝統を持つ茶屋で、
おでんにみたらし団子、いか焼、ジュース、ビールと充実の品揃え。
保津川ラフティング
20年程前よりゴム製のラフト（ゴムボート）で下るラフティングの保津川下りがおこなわれている。
自分で漕いで大岩の間を抜けたり急流を下るスリルが味わえ、アクティビティとして人気。
トロッコ列車
保津峡で保津川下りと並んで有名なのが嵯峨野観光線のトロッコ列車。保津峡の渓谷沿いを走っているため窓のない開放感がある車両から四季折々の景観が楽しめる。