倉敷美観地区は、風にそよぐ柳並木や白壁となまこ壁が美しいコントラストを見せ、倉敷川に影を落としています。江戸時代には米の積出地として栄えたこの一帯は、伝統的な日本建築の美しさをよく残しており、往時の町並みを偲ぶことができます。
文化施設
このエリアには、多数の文化施設が点在しています。特に、世界的名画を集めた大原美術館、民藝館、考古館などが有名です。
倉敷美観地区の歴史
倉敷美観地区は、岡山県倉敷市にある町並保存地区・観光地区です。1969年に倉敷市の条例に基づき美観地区に定められ、1979年に県内2件目の重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。江戸時代初期の寛永19年(1642年)、江戸幕府の天領に定められ、倉敷代官所が設けられて以来、備中国南部の物資の集散地として発展しました。
主な建築物
- 旧大原家住宅: 国の重要文化財、2018年4月から一般公開。
- 有隣荘: 1928年に作られた大原家別邸、通常は非公開。
- 倉敷館: 登録有形文化財、旧倉敷町役場。現在は無料休憩所・案内所として利用。
- 井上家住宅: 国の重要文化財、2023年3月から一般公開。
- 楠戸家住宅: 倉敷市重要文化財、国登録有形文化財、はしまや呉服店。奥の旧米蔵「夢空間はしまや」がギャラリー、コンサートホール兼ねた喫茶空間として営業。
- 倉敷アイビースクエア: 近代化産業遺産。
- 旧中国銀行: 登録有形文化財、薬師寺主計の設計で1922年に竣工したルネサンス風建築。大原美術館の新たな展示施設として2020年11月に開設予定。
- 三楽会館: 旧倉敷郵便局。
史跡・観光スポット
- 大原美術館: エル・グレコ『受胎告知』など多数の名画を所蔵する日本を代表する私立美術館。
- 新渓園: 大原美術館本館と分館の間にある日本庭園。
- 倉敷川: 柳並木と川舟流しが見られる。
- 倉敷考古館: 江戸時代築の米蔵を使用した考古学系博物館。
- 日本郷土玩具館: 江戸時代築の米蔵を使用したおもちゃの博物館。
- 倉敷民藝館: 江戸時代築の家屋を使用し、世界の生活用具を展示。
- 倉敷物語館: 東大橋家住宅を改修・整備した観光文化施設。
- いがらしゆみこ美術館: 少女漫画家いがらしゆみこの個人美術館。
- 倉敷デニムストリート: デニム商品中心のショッピングストリート。
宿泊施設
- 旅館くらしき
- 料理旅館 鶴形
- くらしきの宿 東町
- 吉井旅館
- 倉敷国際ホテル
- 倉敷サクラステイ
その他
- 珈琲 エル・グレコ: 大原美術館に隣接する喫茶店。
- 倉敷公民館: 1969年に開館、ホールと音楽図書館を備える。
自然と神社
- 鶴形山: 地区の北側にある小高い山。
- 阿智神社: 鶴形山の頂上にあり、倉敷の氏神として信仰を集める。
倉敷美観地区は、江戸時代の風情を残し、美しい景観と豊富な文化施設で訪れる人々を魅了します。ぜひ訪れて、その歴史と文化を体験してください。
美観地区で行われるイベント
春のイベント
- 倉敷春宵あかり
- 倉敷雛めぐり
- 藤まつり - 5月5日
- ハートランド倉敷
- 阿智神社春まつり(春季例大祭) - 5月第3土・日曜日
夏のイベント
秋のイベント
- 倉敷屏風祭
- 阿智神社秋祭
- 倉敷国際ふれあい広場
- 着物の着付け体験と写真撮影会
冬のイベント
- 和文化センター 投扇興
- 着物の着付け体験と写真撮影会
通年イベント
- 倉敷館コンサート - 5月〜7月、10月〜12月 毎週木曜日 計24回開催
- くらしき朝市 三斎市 - 毎月第3日曜日
同時開催イベント
- 着物でぶらり!笑顔でパチリ!!ようこそ倉敷へ - 倉敷雛めぐり、倉敷屏風祭と同時開催
不定期イベント
期間限定イベント
- 倉敷2コイングルメ - 2012年1月12日〜12月31日
- 倉敷天領寿司祭り - 2012年3月1日〜2013年2月28日
倉敷美観地区の歴史年表
- 1926年(大正15年): 皇太子(昭和天皇)が倉敷に来訪、有隣荘に宿泊。
- 1930年(昭和5年): 大原美術館開館。
- 1937年(昭和12年): 後のクラボウ社長・大原總一郎がドイツの城郭都市・ローテンブルクを訪れ、倉敷の町並み保存を思いついた。
- 1947年(昭和22年): 昭和天皇が日本全国巡幸、倉敷を訪れる。
- 1948年(昭和23年): 倉敷観光協会が本町、前神町、向市場町を風致地区に指定。
- 1949年(昭和24年): 佐藤重夫が倉敷都市美協会結成。倉敷の町並写真がアサヒカメラに初掲載。
- 1950年(昭和25年): エドマンド・ブランデン来訪。倉敷考古館開館。
- 1954年(昭和29年): ヴァルター・グロピウス来訪。
- 1955年(昭和30年): 倉敷市により倉敷川河畔の護岸工事と柳の植栽が始まる。
- 1956年(昭和31年): 岩波文庫が「倉敷 古い形の町、美術-」を発刊、倉敷の町並みが全国に紹介される。
- 1967年(昭和42年): 町並み保存事業が本格的に始まり、「倉敷市伝統美観保存条例」が制定。
- 1969年(昭和44年): 「倉敷川畔特別美観地区」に指定、“美観地区”の呼称が初使用。
- 1973年(昭和48年): 倉敷アイビースクエア開業。
- 1978年(昭和53年): 「倉敷市伝統的建造物群保存地区保存条例」が制定。
- 1979年(昭和54年): 国により13.5haの地区が「重要伝統的建造物群保存地区」として選定。
- 1990年(平成2年): 電柱・電線地下埋設工事が倉敷川畔両岸から始まる。
- 1998年(平成10年): 重要伝統的建造物群保存地区の追加選定により選定区域を15haに拡大。
- 2000年(平成12年): 「倉敷市美観地区景観条例」が制定。
- 2005年(平成17年): 夜間ライトアップが始まる。
- 2009年(平成21年): 7月5日、倉敷観光案内所倉庫が火災により全焼。
- 2014年(平成26年): 1月22日、倉敷川に残る旧倉敷紡績倉敷本社工場専用の荷揚げ場跡(倉敷市本町)で、舟荷の積み降ろしに使われたとみられるスロープ状の遺構が発見される。この年、地区内の主要な通りにおける電線類の地中化事業が完了。
- 2017年(平成29年): 4月28日、「一輪の綿花から始まる倉敷物語 - 和と洋が織りなす繊維のまち」の構成文化財として、日本遺産に認定。